ABOUT

- 野良
- LiveliFood(ライブリフード)
30歳を過ぎた頃、醪が発酵し始める瞬間を見て、「酒造りをしよう」と思いました。 そこから、調べて、試して、訪ねて、話を聞いて。 やがて移住して、米を育て、酒蔵で蔵人として働き、糀の製造を始め、どぶろくの醸造に至ります。 なぜ酒を造りたいのか、ずっと分かりませんでした。 嗜好品だから絶対必要なものではないし、華やかに発展している業界でもない。 一方で、自然栽培での米づくりと昔ながらの酒造りは、気の遠くなるような仕事。 それなのに、やればやるほど熱中していくのです。 稲も野菜も、元々は野生です。草が育つ土であれば、薬や肥料なしで同じように育ちます。 草が大きく育つほど、根も地中に深く入ります。また、秋に枯れて黒く解れ、土に還る草の亡骸も増えます。土は柔らかく湿り気を保ち、肥えた腐植の香ばしさを纏います。菌や虫、小動物が集まり、賑やかな生命の循環が膨らんでいきます。 そのまま放っておくと、やがて木が生えて森になり、草の勢いは衰えます。そこで人である私が草を刈って敷き重ね、米や野菜を育てる。結果として、多様な生命を育む草原の均衡が保たれます。 酒も、元々は野生の麹菌や乳酸菌、酵母がたまたま醸したものでしょう。 蒸米、麹、水を合わせただけのものが、ぷくぷくと泡立ち、艶やかな香りを放ち、溶け合わさって酒となる。目に見えない生き物が、確かにそこで生きている。その生命の迫力が、はっきりと感じられます。 そして彼らの営みもまた、人である私が技術を持って手を添えることで、再現されるのです。 米の収穫も酒の醸造も1年に1回。 結果に至るまでの地道な日々が、私の生命の時間。 それが納得のいく瞬間の積み重ねであることは、自分を活かすことであり、そうして初めて他の生命を活かし得るはずです。 野良は、私の目指す姿勢。 飼い慣らされず、飼い慣らさず。 生命を尊重し、対等に向き合う。 人は、生きていくための実りを得ながら、他の生命を輝かせることができます。 他の生命が輝くことで、より豊かに生きていくことさえできるかもしれない。 その中で生まれるものが、野良の米、糀、酒です。 どうぞお召し上がりください。 私とこの土地の生命が、皆さんの糧となりましたら幸いです。 令和8年10月。日本海に面する山口県向津具半島にて。